SaaSは既存社内システムからの乗り換えを正当化できるか

筆者が今最も気に入っている会社はAppirioという米国のクラウドソリューションプロバイダです。尖がった考え方を高く評価しています。そのAppirioのブログに「CIO向けガイド:クラウドコンピューティングとオンデマンド」というのがあり、これをネタにクラウド活用を考えてみたいと思います。

その5つ目は、SaaSは既存社内システムからの乗り換えを正当化できるか。

「もちろんコスト的にSaaSへの乗換えを正当化することができる。ただし、ビジネス上の理由があれば、だ。コスト的なメリットは必要だが、十分ではない。1点注意しなければならないことは、コストセーブは大きいが一塊ではないということだ。例えば、サーバ上の全てを移しきらない限り、サーバをシャットダウンすることができない。コストセーブを現実のものにするには、ロードマップが不可欠だ」

クラウド導入の理由として、コスト削減がクローズアップされることが多いですが、大きなコスト削減を実現するためには、しっかりしたIT戦略があり、その中にはロードマップが必要です。言い換えれば、クラウド導入は手段であって、実現すべき目的は、単なるコスト削減ではなく、経営改革、つまり経営課題を解決すること、でなければなりません。

クラウドの3つのメリットと4つのチェックポイント:最終話

ビジネス用としてクラウドを利用する場合の3つのメリットと4つのチェックポイントという記事を中小企業が経営課題を解決するための手段として検証するシリーズの続き、最終話です。

チェックポイント5つ目:セキュリティと「出口」。

「今後プロバイダを変更することも考えられるゆえ、スムーズな移行を確保するため、フルAPIアクセスを含むウェブベースのインタフェースを通してクラウドサーバを管理できること。セキュリティとデータの整合性と機密性の保証もチェックリストに入れるべき。」

特定のプロバイダに縛られることをロックインといいますが、ロックインされることがないよう、注意が必要です。現在ベストと思われるプロバイダであっても、今後何年にもわたってベストチョイスであり続けるかどうかはわかりません。そのためにも、いつでもプロバイダを変更できるようにしておくべきであり、また、そのようなことが出来るのもクラウドの強みというか、良さのひとつであるはずです。セキュリティに関してはいうまでもありません。

クラウドの3つのメリットと4つのチェックポイント:第八話

ビジネス用としてクラウドを利用する場合の3つのメリットと4つのチェックポイントという記事を中小企業が経営課題を解決するための手段として検証するシリーズの続き、第八話です。

チェックポイント4つ目:SLA(Service Level Agreement)。

「ほとんどのプロバイダは、SLAに高可用性とパフォーマンスの保障する。最新のサーバとインフラストラクチャにより高いレベルのにより、99.9%以上の稼働率を提供するのは当然である。」

第二話で触れたとおり、99.9%では不十分です。マイクロソフトのAzureは99.9%をうたっているせいかもしれませんが、もう1つ「9」が必要、つまり、99.99%が最低限レベルだと思います。

クラウドの3つのメリットと4つのチェックポイント:第七話

ビジネス用としてクラウドを利用する場合の3つのメリットと4つのチェックポイントという記事を中小企業が経営課題を解決するための手段として検証するシリーズの続き、第七話です。

チェックポイント3つ目:価格を比較せよ。

「非常に競争が激しい市場で、ベンダーは新規顧客の獲得に躍起。スポット価格と期間契約価格の両建てになっている場合が多い。チャージされる最小単位は1分など」

これは言わずもなが。当然価格比較をするはず。ただ、安けりゃいいってもんじゃないですよね。信頼のおけるベンダー間で比較しなきゃいけません。

クラウドの3つのメリットと4つのチェックポイント:第六話

ビジネス用としてクラウドを利用する場合の3つのメリットと4つのチェックポイントという記事を中小企業が経営課題を解決するための手段として検証するシリーズの続き、第六話です。

チェックポイント2つ目。

「その2:オープンであること。

個々の要件に対応できるよう、オープンで、柔軟なプラットフォームを提供していること。オープンスタンダードを採用していれば、専用ホストからの移行も容易であり、アプリケーションやデータをロックされることもない。」

プラットフォームあるいはインフラという点ではオープンなものを選択した方がいい、という点はあると思いますが、ほとんどの中小企業にとってそれはどうでもいいことかと思います。なぜなら、クラウドで利用するものはSaaSになるからです。ソフトウェアをサービスとして利用するSaaSでは、ユーザインタフェース自体は各社各様で、似たようなところはあるでしょうが、基本的にそれぞれ異なっています。その面での互換性は望むべくもありません。

むしろ、データの互換性の確保と作りこみ度を極力少なくすることに注力すべきです。

いずれのSaaSであれ、未来永劫同じものを使い続けるとは限りませんし、良いものが出てくれば、いつでも移行できるようにしておく必要があります。そのためには、データを抜き出し、最小限の加工で新しいサービスに取り込めるかどうか、がポイントです。これがデータの互換性。

SaaSによっては、豊富なAPIを用意しており、作り込めば、細かい要望にも対応した仕組みを構築することができますが、現時点では業界標準のAPIは存在しませんので、各社の独自仕様に対応することにあります。その結果、移行する際にはその部分の再構築が必要になり、その費用を考えると、簡単に移行できなくなる恐れがあります。従って、出来る限りいわゆるカスタマイズは減らすとともに、コアの部分は各社共通、インタフェースの部分のみ入れ替えればどのSaaSにも対応できる、というような設計を志向することも必要です。

クラウドの3つのメリットと4つのチェックポイント:第五話

ビジネス用としてクラウドを利用する場合の3つのメリットと4つのチェックポイントという記事を中小企業が経営課題を解決するための手段として検証するシリーズの続き、第五話です。

今度はチェックポイント。まずは1つ目。

「いずれにしろ、クラウドソリューションを選択する価値は、その不便さよりも大きい。評判のベンダーを選ぶ必要がある。最も人気のあるベンダーは大手のアマゾン等だが、もっと小さいベンダーも融通がきいて値段も安いので考慮に値する。

選択する際のいくつかのチェックポイントがある。

その1:カスタマーサービス

優れたテクニカルおよびカスタマーサポートのチームを有しているベンダーであること。カスタマーサポートに電話して、彼らのオペレーションをチェックしてみること。応答からどれぐらい優秀で迅速かを判断すること。」

小さなベンダーを選択することには反対。値段は安いかもしれないし、融通がきくかもしれませんが、規模が小さい、つまりスケールメリットが小さいベンダーはパブリッククラウドとしての重要な要素に欠けています。また、融通が利くのは、ポリシーやルールがゆるいか、運用がルーズか、どちらかなのかもしれません。それはデータ流出などの危険性が高くなることを意味しているかもしれません。カスタマーサポートを吟味すれば、おのずと答えがでてくるかもしれませんが...

クラウドの3つのメリットと4つのチェックポイント:第四話

ビジネス用としてクラウドを利用する場合の3つのメリットと4つのチェックポイントという記事を中小企業が経営課題を解決するための手段として検証するシリーズの続き、第四話です。

メリットの4つめ、最後です。

「パブリッククラウドのデータセンターでは、データは複数のサーバ上にコピーされるため、サーバがダウンしても、アプリケーションとデータは安全かつ利用可能です。事実、どこかで問題があっても気づかないかもしれません。」

全てのパブリッククラウドがこの通りかどうかは怪しいですが、まともなパブリッククラウドであれば、どこかで問題が発生しても、継続的にサービスを提供できる仕組みを用意しています。また、アマゾンはゾーンと呼ぶ地域内(米国西海岸、東海岸など)でバックアップし合いながら、さらに地域をまたがってバックアップし合うということも可能で、全世界がいっせいに被害を受けない限り、サービスを継続できる、などという芸当も可能です(それ相当のコストがかかりますので、あまり現実的ではありませんが)。

いずれにしろ、自社システムではなかな実現できそうもない高い信頼性の高いシステムを構築可能です。

クラウドの3つのメリットと4つのチェックポイント:第三話

ビジネス用としてクラウドを利用する場合の3つのメリットと4つのチェックポイントという記事を中小企業が経営課題を解決するための手段として検証するシリーズの続き、第三話です。

メリットの3つめ。

「クラウドでは、コンピュータリソースは効果的、迅速に分散されており、急激な需要増や、継続的な需要増に対応できる。クラウドでは、「交通量の限界」に達してしまうリスクを回避できる。」

クラウドのいわゆるエラスティック(Elastic:弾力的)である点は、中小企業にとってもメリットです。

例えば、プレゼント付きアンケートやキャンペーンをネットで展開する計画をしたとします。こういうものは期間限定で、2週間のみというものもあります。

アンケートの回答がどれくらいくるか、始めてみなければ分からないものです。しかし従来は、ある程度の見込みでサーバ等を用意する以外方法がありませんでした。

スタートしてみて、予想より応募が多ければリソース不足を心配し、少なければリソースの無駄を嘆くことになります。

クラウドを使えば、短期間であっても、使った分だけの費用になりますし、予想より応募が多ければ、リソースを増やし、少なければ縮小することも迅速に行えます。あるいは、応募期間中であっても、広告を掲載した雑誌の発売日はリソースを増やし、数日後にはリソースを減らす、などという技を使うことだってできます。

予算を効率的に使うためにも、クラウドは有効な手段です。

クラウドの3つのメリットと4つのチェックポイント:第二話

ビジネス用としてクラウドを利用する場合の3つのメリットと4つのチェックポイントという記事を中小企業が経営課題を解決するための手段として検証するシリーズの続き、第二話です。

メリットの2つめ。

「データは1つのサーバから別のサーバへ簡単に移動でき、マシン自体も追加、削除が可能。これはあなたのサイト、アプリケーション、データは常に利用可能で、事故やメンテナンスによるシャットダウンの影響を受けることがない。クラウドでは、99.9%の稼働率を期待できる。100%であるべきだが、控えめにみておこう。」

前半部分はいいのですが、最後はちょっと。99.9%の稼働率では、「常に利用可能」というわけにはいかないです。

99.9%というと、1日24時間、1ヶ月30日で計720時間。稼働率99.9%というのは、0.72時間、つまり43分は止まっているということです。必ずしも43分間止まるということでもないですが、契約上は43分間以上止まれば何らかのペナルティが発生するということであって、43分以上止まらないということを意味しているわけでもありません。

いずれにしろ1ヶ月間で43分止まれば、業務的に困る場合も想定されますので、99.9%でOKというわけには恐らくいかないでしょう。継続的サービス提供が受けられるような仕組みが追加的に必要で、99.99%、ものによっては99.999%の稼働率を達成してもらわないと、いざと言うときに使い物にならないかもしれません。

米ベライゾンのクラウド展開に学ぶ

米国にて携帯電話およびデータセンタービジネスを展開しているベライゾン社(Verizon)が新たに中小企業をターゲットとしたクラウドの展開を開始しました。CaaS SMBと呼ぶものです。CaaSは恐らくベライゾンの造語で、Computing as a Serviceの略です。IaaS、PaaS、SaaSのどれとも違うと言いたいのでしょうがあまり感心しません。それは別の機会に議論することにします。SMBは、もちろん三井住友銀行ではなく、Small and Medium Businessの略で、中小企業のことを意味しています。

クラウドは中小企業にとって経営課題を解決するための強力な武器になり得るものです。このベライゾンのサービスは米国内ユーザ向けのため、日本から利用することができませんが、中小企業の方々へクラウドサービスを提供する際の参考になると思い、ベライゾンを例にとって日本での展開を考えてみたいと思います。

CaaS SMBには以下の特徴があると主張しています。

  1. シンプルなウェブベースのコンソール
  2. 最低使用料なし、期間拘束もなし
  3. 完全冗長化アーキテクチャ
  4. サーバクローニング
  5. ハードウェア負荷分散
  6. 各種オペレーティングシステムを選択可能
  7. 既存アプリとの互換性
  8. 組み込み済みセキュリティ機能

ウェブベースのコンソールでコントロールなので、技術的バックグラウンドがなくても利用可能、ということですが、今日のクラウドではウェブベースのコンソールは常識です。とはいえ、技術的バックグラウンドがなくても利用可能かどうかはやや疑問。

最低使用料や期間拘束がないのもクラウドの常識ですね。

完全冗長化というのは、どこかハードウェアに障害が発生しても、利用できなくなるという事態が発生しないよう、多重化されているということです。冗長化の程度はクラウドサービスの提供者によって異なりますが、完全冗長化はメリットです。

サーバのクローニングというのは、サーバのクローンを作っておくことができる機能です。本番稼動しながら、クローン側で開発をおこなうといった利用方法から、サーバのバックアップとして利用することもできます。

ハードウェア負荷分散装置は、複数のサーバが存在する場合、均等に負荷を分散するためのハードウェア装置です。専用ハードウェアを用いず、ソフトウェアで行うこともできますが、高い性能が必要な場合にはハードウェアの方が有利です。ベライゾンでは専用ハードウェアを利用可能ということです。

OSについては、Windows2003、Windows2008、各種Linuxが利用可能とのことです。この辺もアマゾンAWSと同じです。

既存アプリとの互換性とは、既存アプリをなんら変更しなくてもCaaS SMBで動作可能という意味のようです。残念ながら既存アプリを何も変更せず、ただクラウド上で動作させても意味がない、ということはないですが、たいした意味を持ちません。多少コスト削減ができるかも、というレベルのはずです。

セキュリティ機能が組み込み済みという点はこのサービスの利点です。

このCaaS SMBは例えばAmazon AWSと比較して、極端に違っているという感じはしません。ただし、Amazon AWSは先進の機能が盛り込まれていますが、その分、分かりにくいというか単純ではありません。ベライゾンはAmazon AWSに比べるとシンプル化されており、分かりやすいという利点があります。また、ユーザにとっては、携帯電話を始めとする通信系の契約とあわせて契約できる点が利点になると思います。

とはいえ、多くの中小企業にとって、クローニングやハードウェア負荷分散装置等をどう使えばいいのか、まだまだハードルが高いように思います。

中小企業向けとはいうものの、やはり当社ベルシステム研究所のように、クラウド提供者と、ユーザである中小企業との間を取り持つプレーヤは不可欠なのではないでしょうか。